モノノノノノ

もやっとした時にもやっとしたことしか書きません。簡素に生活しつつ、マッチョになりたいです。

過去のお金

お金はひとを狂わせる。狂った人はお金、そして自分をコントロールできなくなり、次は人生が狂う。

よくありそうな話だ。

お金がある時は良かった。好きなモノを手に入れて、周りはチヤホヤし、彼を恐れ、言いなりになった。だが、今はどうだ。誰も彼の話を聞きたい人間はいない。一度大金と偽物の幸せ、パーフェクトな自分の虚像、自分は頑張ってきたという自負は、彼の言葉を卑屈にさせ、つまらなくさせた。何を言っているのかもあまり理解できない時さえある。

昭和の成功者とでも言うのだろうか。団塊の世代のリーダーだろうか。男尊女卑にも似た亭主関白で内弁慶、外面は良い。高度経済成長期よろしく仕事はバリバリ、土日はゴルフで、夜は酒か麻雀。お金は自分で管理して、遊び、女遊びもそれなりに楽しんだ。文句があるなら言ってみろ。金を稼いでいるのは俺だ。不満があるならもっと稼いでやる。文句言うんじゃないぞ。お金を稼いでいるのは俺だぞ。

戦後間もなく生まれ、何も無かった苦しかった時とは比較できない。彼は欲しいものを手に入れた。何でも言うことを聞く妻と子供も手に入れた。

今は誰も彼の話を聞かない。誰もが彼の話がつまらないのを知っている。彼にはもうお金もない。

彼はお金を手に入れた。
でももうそれはない。

過去のお金は意味がない。
過去のお金は彼に虚像だけを与えた。

彼は戻り方は知らない。